キリギリス

先日のKenny's@調布のライヴに来て下さった皆様、ありがとうございました。

この日のライヴは終了後に色んな常連さんに「音が変わった」と言われました。

「PA何か変えたの?」というお聞きになった方もいらっしゃいました。

このパブで2年以上ライヴを続けておりますが、今までのこのパブでは見たことが無いくらいお客さんのノリや反応が良かったというのも印象的でした。

 

PAは何も変えていません。

演奏が変わったんです。

勿論、O'Jizoの各メンバーは、まだまだいくらでもレベルアップする余地がある位伸びしろがあることを見込んで組んでおり、毎回のライヴの度に演奏が変わっていっているのは間違いないのですが、今回のそれは自分達でも想定外と言っていいくらい桁違いの変化でした。

具体的に何が変わったのか、言葉にするのは難しいのですが、音の作り方、リズムのとり方、フレージングの作り方といった辺りのことが変わったと言えばいいでしょうか。

結果的には圧倒的に音圧が増して、リズムが劇的に良くなり、流れが強くなったという感じです。

 

これは基本的には個々人のレベルアップによるものなのですが、実はこういうことを引き出すためにO'Jizoでは割とユニークな方法が使われています。

何かと言いますと、それはリハーサルの形式。

通常のリハは4人全員が集まってライヴでやる曲をさらってという感じなのですが、O'Jizoではその他に豊田が他のメンバー一人一人と一対一で練習をするということを時々意識的にやっています。

これはリハというよりは研究会に近いでしょうか。

どうやってリズムやフレージングをつくるか、どうやって人と音を合わせるかということを、時にお互いの音を聴きあって、また時に一緒に合わせることで模索していくのです。

やる曲は特にライヴでやる曲とかでなくても構わなくて、セッションでメジャーな曲だったり、その時頻繁に練習している曲だったり、やりなれている曲を適当に持ってきます。

 

音楽をやる上で一番難しいことの一つは、どんな楽器でも自分の音を客観的に聴くことが難しいことだと自分は思います。

しかもアイリッシュは基本的に独学。

クラシックと違って定期的に誰かのレッスンを受けるということはあまりありません。

そのような状況の中で音楽の根本的なレベルアップをはかるにはどうしても客観的に聴いてくれる人の意見が不可欠なのです。それ故、こうして度々一対一の機会をつくり、音の作り方を色々実験しながら、人の音を聴いて、また、自分の音を人に聴いてもらう訳です。

 

こういった作業は4人ではまず無理です(笑)

人間目の前の人一人の音を深く聴くのでさえ相当集中力と聞き分ける力が要求されます。

アイリッシュは基本的に旋律がユニゾンをとるので、4人なんてとても無理無理。

4人は4人で合わせる時の、また別の聴き方がありますが、それは個々のレベルアップにはあまり向きません。

 

こうした練習方法は、最初から意図してやった訳ではなくて、現在豊田、長尾、中村が共に関わっている仕事の形式のために、4人でのリハは時間が取れないが2人ならば可能という状況が多く生まれ、結果的にこのような練習方法になった訳です。

今回はそれに加え、嬬恋村でのVOICE SPACEの合宿があり、普段あまり時間の取れないフィドルの内藤が同行して、山小屋で猛特訓。

といえば聞こえがいいですが、実際にはなーんにも仕事をしないでひたすら音楽をというキリギリス状態でした(笑)

(その間ご飯を作ってくださったり、色々働いてくださった皆様ありがとうございます。)

 

この嬬恋村の合宿の話はまた別の機会に書こうと思いますが、このキリギリス合宿のお陰で、今までやっていた音楽は、自分たちがアイリッシュだと思っていた音楽は一体何だったのだろうと思う位、音楽のつくり方が根本的に変わりました。

 

さて、実際の音が気になる方々、ぜひライヴに足をお運びください。

アイリッシュ・パブでお待ちしております。