2〜3日目 ダブリン

ダブリンに着いたのが22時半。
一刻も早くホテルにたどり着いて休みたい、そう思いながら荷物が出てくるのを待つ。
ベルトコンベヤーを眺めていると変な物が流れてくるもんだ。
傘が裸で出てきた時にはにやにや笑っていたが、その後すぐ壊れかけのヘアーアイロンがやはり裸で出てきた時には、絶句。
しかし本当に血の気がひいたのは、ヘアーアイロンがもう一度出てきた時。
待て待て、荷物が無いぞ。
カウンターに問い合わせてみるが、もうその日の最終便は終わっていて、どんなに早くても明朝10時半の便とのこと。
慣れた手つきで渡されたエマージェンシーセットだけをもらって空港を後にする。
夜も遅いのでバスではなくタクシーで移動。
乗ったタクシーは若めの兄ちゃんで、前日のイスタンブールが生やさしく思える程飛ばす飛ばす。
その勢いが中心街の細い道に入っても全く衰えることを知らないことがわかった時には背筋が凍った。
急カーブを曲がる度にとしまえんやら富士急やらにこんなアトラクションあったなと半ば盲ろうとしながら考える。
ホテルに着いたのは深夜12時前。
お店はみんな閉まっていて、コンタクトレンズ一つ外せない。
エマージェンシーセットに入っていたのは、歯ブラシ、歯磨きチューブ、ヘアーブラシ、ひげ剃り、綿棒、洗剤、シャワージェル、得体の知れない乳液っぽい瓶、XXLのTシャツ。
女性用はひげ剃りの代わりにコットンセットとローション、爪ヤスリが入り、TシャツはXL。
まるでおばけのQ太郎にでもなれそうなサイズ。
泊まったホテルはダブリン中心街に近い古い建物で、中は小ぎれいで雰囲気が良く、天井が高くて解放的だったが、荷物のことで頭がいっぱいだ。
幸い保険をかけていたので、荷物到着の遅延の保障について聞くべく電話をかける。
荷物の未着を確認してから72時間以内に荷物の未到着のために買わざるを得なかったものを10万円まで保障してくれるという。
領収書と必要書類の提出で後から精算される仕組みだ。
そんな話を聞いてちょっとほっとしつつ、夜遅いのでパブにもいかず、半ばふて寝。
翌朝7時に、空港で言われたように電話をかけてみるが、荷物の行方はわからないという。
11時頃には詳細がわかるからその頃に空港からかけると言われる。
それまで多少時間があったので街に出て買い出し。
前夜からそうだったのだが、想像を絶する位寒い。
ダウンジャケットやトレンチコートを着ている人もいる位。
とにかく防寒着を買い込む。
11時半頃、日本から持って行った携帯電話に着信が入る。
通話料は受けるだけでも信じ難い位かかるが背に腹はかえられない。
昨日から奔走してくれている空港の兄ちゃんから、荷物が来ない、見つかり次第ゴールウェイに送るから今後の滞在先がわかり次第知らせてくれと言われる。
ネットカフェに行ってゴールウェイの宿泊を予約して空港に電話。
これだけで結構大変だったのだが、空港に電話して出たのは昨日からの兄ちゃんではなく、割と年配な感じのおばちゃん。
この人が無愛想で対応がひどくて、こちとら藁にもすがる思いなのに、散々あれこれ言った挙げ句、見つかったらこちらから電話するからそっちからかけてくるなとのたまう。
それまでは、出てくるだろうという希望的観測と保険とでいくらか楽観視していたのだが、ここにきて出てこないかもしれない可能性が急浮上。
安いスーパーで出てこないことを前提に必要なものを買い揃える。
下着類を買っていると、日本のユニクロが、値段的にはほとんど変わらないのに、いかに凄まじい品質の高さを誇っているかを痛感する。
ここで一つ重要なことを書いておこう。
スーツケースの中にあることが最も痛手だったのは、実は充電器の類い。
この日記、PCから書いているのではなく、ipod touchから書いていて、オフラインで文章を書き溜め、たまたま運良く無線LANが使える時にUPするという他力本願な方法に依っている。
このipod touchの電池が無くなると、日記が書けなくなるだけでなく、PCメールも使えない、旅行に必要なデータも見られない、辞書も使えないと、様々な副産物が付いてくる。
そして、何より充電器が無いことで、空港から唯一の連絡手段となりつつある日本から持って行ったソフトバンクの携帯が、電池がいつまで持つかわからないというとても愉快な状況が生まれる訳だ。
以前にアイルランドに行った時に買ったプリペイド携帯なんて本体もまるごとスーツケースの中で何の役にも立たない。
悩んだ挙げ句、苦渋の選択で、保険頼みで新たにプリペイド携帯を購入。
これまでは空港に電話一つするのも大変だったから多少楽になることだろう。
まあどの道空港にはおばちゃんから電話禁止令を受けてるんだけどね。
ついでに他にもスーツケースに入れたことが悔やまれた品々を列挙してみよう。
小竹長兵衛作のお気に入りの眼鏡、Ortliebの防水の小さな鞄、大学時代からテニスで愛用していたジャージ、ゴアテックスのレインジャケット、F管のローホイッスル(!)
それから、もう一つ肝を冷やす話があって、ダブリンでの買い出しの最中にようやく気が付いたのだが、相方のクレジットカードが不注意でスーツケースの中にあることが発覚。
万一スーツケースごと盗まれている場合これは厄介なことになる。
しかし、クレジットカードを今ここで止めてしまった場合、再び使えるようにするには再発行しかないため、あまり多くはない現金と、豊田のクレジットカード一つでやりくりしなければならない。
とりあえずカード会社に電話。
現在まだ使われていないことを確認。
荷物が盗まれていない可能性が高くなる。
やはり悩んだ挙げ句、しばらく止めずに様子見。
そんなこんなで、早々にダブリンを後にするはずだったのが、買い出しや連絡やらですっかり夕方。
慌てて長距離バスに乗るが、この分だとゴールウェイに着くのは夜9時半頃だろうか。
お蔭様で移動は恐ろしく身軽ですがね。
ネタの神様が憑き過ぎて困る今日この頃だが、今日のところはこの辺にしといてやろう。