楽器職人 その1 ポール・ドイル

毎日ヘビー過ぎて、結局さかのぼって書く羽目になってしまいましたが、小出しに書いてみます。
ゴールウェイ二日目、荷物が発見されたという連絡の後のことです。
必要なものを買いに行く予定だったのが買う必要が無くなったので、街をふらふら歩くことに。
割と早々だったと思います、妙な建物、妙な看板を発見。
恐る恐る入ってみると、まずドアのところに、ドアを開けると自動的にピックが数本の弦を弾くような仕掛けがあって和音が鳴り、客の来訪が知らされてもはや後には退けない格好に。
中は木材の山で人はおらず、すぐに二階から声がかかる。
上がってみるとあらゆるところにつくりかけ、完成品問わず、フィドルからブズーキ、ギター、ハープに至るまで様々な楽器が陳列…されてたり、散乱してたり。
そこは楽器工房。
主はポール・ドイル。
ブズーキの特徴的なヘッドを見るまであの日本でもよく見かける有名なメーカーだとはついぞ気がつかなかったのですが、元々は代々フィドルをつくってきた有名な職人。
親切にも彼はこれまでつくってきた楽器の写真等を見せながら色々説明してくれるのだけれど、その場に肝心のフィドルの完成品は無く、試奏は不可(笑)
これって商売になるのですかね。
日本人の客はいつ誰が来たかも手書きのノートを見せながら事細かに教えてくれて、やはり知り合いばかりで、つい最近もよく知っている人が来たという話でしたが、これって軽く守秘義務違反になる訳で、今はやりの顧客情報流出というやつになる訳です(笑)
まあそれはさておき、ここで最も収穫だったのはゴールウェイの有名なフルートメーカー、Sam Murrayがすぐ近くにいるという情報を得たこと。
Sam Murrayは日本では持っている人がほとんどいないのですが、アイルランドでは人気があって、かなりパワフルなことで有名な、一度は吹いてみたかった楽器。
しかも納期を守らないことも有名で、つい最近も知り合いがオーダーしてお金も払ったのに一年以上楽器が来ない憂き目に遭っているというオマケ付き。
ゴールウェイに住んでいるというのは頭の片隅にはあったのですが、特別たずねようとも思っていなかったので、思わぬ収穫でした。
Sam Murrayの話はまた別の機会に書くとして、驚いたのはこの日の夕方手元に戻ってきた荷物の中に、三年前アイルランドに来た時に使っていた携帯電話が入っていたのですが、そのアドレス帳の中にはなんと、ポール・ドイルの名前があるじゃありませんか。
よくよく記憶を探ってみると、三年前アイルランドに来た時に、ダブリンにある、おじいさんおばあさん娘さんの三人が切り盛りしている小さな楽器屋さんに、F管のチューナブルのホイッスルを探してもらったことがあるのですが、結局手に入らず、その時親切にもここならあるかもと教えてくれたのがポール・ドイルだったのです。
当時はダブリンの近くに住んでいるのだろうと勝手に思っていたのですが、その時電話で会話をしたポール・ドイルに、こうして実際に、しかも偶然巡り会うとは夢だに思わざりきでした。