ミニマルライフ vs 文化庁支援

久々のミニマルライフのお話です。

年末年始を中心に締切に追われていたこともあり、blogだけでなくPodcastもyoutubeも一旦ストップしていました。

ようやく落ち着いてきたのでぼちぼち再開していきたいと思います。

ただし、自分で締切をつくって曜日で追われるのは少ししんどいので、不定期に、書きたくなったら書くというスタンスでしばらくやってみようと思います。

 

1. 文化庁の支援制度

ここ最近ミニマル系の話を書く気になれなかったのは忙しいこともあるのですが、実はそれ以上に文化庁の「文化芸術活動の継続支援事業」の影響が大きかったのです。

この制度、支援してくれるのはありがたいのですが、色々問題がありまして。

ざっくり言うと、何か新しいことに積極的にトライするアーティストに対して最大で150万円の予算の2/3(あるいは3/4)まで支援するよという制度。

例えば何か公演をやるのにかかる経費とか、新しい取り組みをするのに機材導入する場合、10万円未満の消耗品に限って支援しますよとかそんな感じです。

審査とか書類とかそれなりにハードルが高いので、全然もらうべきでない人に渡ったりということはほとんど無いようです。

むしろ申請のハードルが高過ぎて挫折して応募が予想を下回り、4次募集までする羽目になったくらい。

勿論そこはそういうことをきちんとできないアーティスト側の問題。

ただ、今日明日生活するのにも困るという人達にとっては、1/3を負担する体力も無いという人も当然いる訳でして。

どなたか国会議員の方も「いつも通りのこともできない状態なのに、何か新しいことをやらなければ支援しないって酷過ぎません?」という趣旨のことを発言されてました。

全くその通りだと思います。

まぁ世の中そういうものだらけで、Go to~とか基本的に遊びに行く余裕のある人への支援な訳で、富の再分配という意味では逆行してますよね。

消費税ゼロにして頂いた方が余程公平性があって困っている人を救える。

ちょっと脱線し過ぎました。

文化庁の支援事業の話に戻ると、なかなか問題のある制度ですが、それでもまぁ使えるものは使わなければと自分自身も1次募集、追加の4次募集と2回に渡って申請し、一応一通り審査は通った訳です。

 

2. 文化庁の支援の中身

自分の場合はほぼ消耗品費で申請しました。

新たな公演をとか怖過ぎて企画できなかったですし、実際公演を組んだ知り合いは、予定していた公演が緊急事態宣言で実施が危ぶまれ、締め切りの2月までに成し遂げられるか危ういと苦しんでました。

こういうところにも制度の危うさが見えますね。

自分の話に戻ると、主に自宅でレコーディングや動画撮影ができるようにするための機材に投資しました。

・マイク
・オーディオインターフェイス
・マイクプリアンプ
・吸音材
・遮音材
・ミラーレス一眼レフカメラ
・DAWソフト
・動画編集ソフト
・照明
・動画配信用スイッチャー
・レンズ
・モニタースピーカー
・机
・椅子

等々。

実は4月の時点で自宅でのレコーディングはすぐに必須になると気付いて、これまで避けていたジャンルだったのですが、思い切って勉強を始め、機材を導入し始めていました。

なのでそういう意味は渡りに船だったことは確かです。

ただ、プロフェッショナルレベルのマイクとかオーディオインターフェイスとか10万円超えるものはざらで、超えてしまうと支援の対象外になってしまうのでそこは海外から取り寄せたりとかなり苦労しました。

国内の音楽家御用達のSound Houseにこの手の機器の注文が殺到し、在庫が空になって数ヶ月間以上入手困難になったことも状況をさらに難しくしました。

1/4の支出ですら決して楽ではない状況でしたが、しかし、まぁそれでも、お陰様で大量の機材を一気に導入することができました。

夢の自宅スタジオがあっという間にできあがった訳です。

そして、お陰様で遠隔で納得できるレベルのレコーディングができるようになり、Podcast、YouTubeの動画と今までトライできなかったジャンルに次々飛び込むことになります。

もう勉強に次ぐ勉強でしたが、実にスリリングで面白い体験となりました。

 

3. 突然のマキシマムライフ

さて、長くなりましたが、実はここまでは本題ではなく、前振りですw

この半年間のものの購入ペースが恐ろしかったというのが本日の主題です。

ざっくりカウントして1次、4次両方合わせて実に80品目以上に上りました。

Amazonの注文履歴がおかしいです。

領収書の量がおかしいです。

廃棄した段ボールの量も、配達員の方々を迎え出た回数も、普通ではありませんでした。

良いものを徹底的に調べ上げて間違いないものを購入するというアクションは結構好きなので、こういう形で普段買えないものを次から次へ買えるというのはそれこそ夢のような体験な訳です。

いや、正確には夢のような体験のはずでした。

しかし、実際に訪れた感情に自分は戸惑うばかりでした。

次から次へ良いもの、念願のものが届く、喜びに満ち溢れる体験のはずなのに、手にして沸き起こる喜びはほんの短期間。

それどころか、信じ難いことに、むしろ次から次へとものが増えて、物の量をコントロールできなくなり、持て余すものすら出てくる状況にストレスを感じるようになってしまったのです。

しかも買えば買う程今度はあれが欲しい、これが欲しいという感情が次々生まれて、一層の飢えが来る悪循環。

これは自分にはショッキングな出来事でした。

 

4. ミニマルへの反動

そんな時にたまたま読んだのが、

ジョシュア・フィールズ・ミルバーン, ライアン・ニコデマス共著, 吉田俊太郎訳『minimalism』

という本でした。

電子書籍で見つけて、シンプルな装丁に惹かれて読んだのですが、同じようなことが書いてありました。

彼らは誰もが羨む出世コースに乗り、バリバリ稼ぎ、大きな家に住み、良い車に乗って、欲しいものは何でも手に入れたが、ちっとも幸せではなかった、それでものを手放して、仕事を辞めて、小さな家に住んで、最小限の出費のみで小説とblogを書いて暮らしている今が幸せ、ざっくり言うとこういう話。

自分はバリバリ稼いだ訳でも、大きな家や高い車を買った訳でもないけれど、短期的には彼らと全く同じ体験をしていたなと読んだ瞬間に思いました。

それで今は反動で家に元々あったものを色々手放し始めています。

少しずつものが少なくなってスッキリしていく心地良さ。

やっぱりこれは変え難いものがあります。

 

 

5. 良いものは良い!買って良かったもの

勿論、この一連の支援で買ったものには良いものがたくさんあります。

自分じゃ高価で手が出なかったけれど、これは確かにこれだけのお金を出す価値がある、本当に買って良かったというものがいくつかあります(残念ながら全部ではありませんw)。

それが何か気になるでしょうからいくつか書いておきます。

第5位 コンデンサマイク Blue Dragonfly

3月に出る新しいアルバムの1つはこれで録っています。

笛は勿論、ボーカル、トーク、ギター、アコーディオン、バウロンまでオールマイティに行けます。

ドラムセットをこれ1本で録ることができるらしいです。

Blueというメーカーは不思議な可愛らしい外見でとても好きなのですが、コストパフォーマンスがとても良く、大体2~3倍位の価格のものと同じ位のクオリティがあるとか。

第4位 スタンディングデスクの脚 FlexiSpot E3B

※これの黒い版です。

家で長時間のデスクワークというのがこれ程きついものだとは思いませんでした。

ずっと座っているというのはものすごく身体に良くないそうです。

これは自由に高さを調整できて、座ったり立ったりとこまめに体勢を変えられます。

しかも天板は元々使っていた天板。

足だけで70kgとかあって、天板を取り付けた後に一人でひっくり返そうとした時には死ぬかと思いましたが、その重さのお陰で安定感抜群。

人が上に乗って上げ下げできるくらいのパワーと安定感があります。

それまでデスクが揺れるのが悩みだったのですが、それも解消しました。

第3位 キーボード Happy Hacking Keyboard Professional HYBRID Type-S

キーボードに2万とか3万とか狂気の沙汰だなと思っていたし、デスクの上にMacBook以外のものがごちゃごちゃするのも嫌だったからあり得ないなという思いもあり、2~3年は悩んでいたのですが、今では手放せません。

MacBookの改善されたキーボードは十分快適なのですが、実は自分の手の形の問題なのか、時々手のひらがトラックパッドに触ってしまい、文章を打っている間にどこかに飛ばされてしまうことが時々あり、それがストレスでした。

この多くの人を虜にするキーボードは、キーを打っていること自体に快感があり、病みつきになります。

そこにAppleのBluetoothのトラックパッド、さらにMacBookをスタンドで上げて視線を高くする、しかもスタンディングデスクで立った状態でというのが自分の今のレコーディング周り以外のデスクワークをする時の新しい定番スタイルです。

第2位 モニタースピーカー YAMAHA HS5

スピーカーというのも1つの大きな沼だと思っていたので、ここはあまり手を出さないようにしていたのですが、色々調べていくとYAMAHAにはNS-10M、通称“テンモニ”と呼ばれる業界標準的なモニタースピーカーがあり、この音を知っているかどうかがエンジニアやミュージシャンの耳をつくる上で一つの基準になるとまで言われてます。

残念ながら今は既に廃番になってしまっているのですが、未だにこれを愛好する方々がたくさんいるというのも驚きでした。

そして、その後継機がこのHS5。

家に届いて初めてその音を聞いた時には衝撃を受けました。

こんなにはっきり鮮明に音が詳細までわかるのか、音の位置関係がこんなにしっかり分離して聴こえるのか。

しかもそれが二つで3万円を切るという信じがたいコストパフォーマンス。

それまで聴くスピーカー、イヤフォン、ヘッドホンによって聞こえが違い過ぎて、何を信じていいのかわからないところがあったのですが、今はこれと同じく業界のど定番、SonyのMDR-CD900ST(通称:赤帯)、この二つで聴いて判断するという基準値を決めてから音の捉え方がまるで変わりました。

おまけに珍しい白色のラインナップがあり、無印良品のボックスとほとんど違和感なく並べられます。

あんまりスピーカーの近くにものを置いてはいけないんですけどね。

第1位 オーディオインターフェイス RME Babyface Pro FS

こいつが一番ぶっ飛んでます。

オーディオインターフェイスというのはマイクから入った音をPCに入れたり、PCの音をスピーカーに出したりと音が必ず通る出入り口。

録る音も流す音も劇的に変化させてくれます。

第2位のYAMAHAのスピーカーの導入の方が先だったのですが、その衝撃をもう一度というくらいの劇的変化でした。

信じ難い音の解像度です。

これを使っている人達の誉めっぷりが笑える程です。

「音が良いのは当たり前で…」って始まったり、「安定感抜群でこれのせいでトラブったことは一度もありません」とかもう絶賛の嵐です。

この子をコントロールするTonal Mixというアプリが複雑なことができすぎるやつで、自分はそこに時々振り回されて使いこなし切れていないという問題が若干ありますが。

決して安くはありませんが、これは買って本当に良かったとずーっと思っています。

デザインもミニマルで手元に置いておくのが嬉しくなる。

こういうものだけに囲まれて暮らしたい、そう思わせてくれる一品です。

ズラーっと書いてみましたが、オーディオインターフェイス、モニタースピーカー、コンデンサマイクの3つは、こういうものを使い始めるから耳が育っていくという代物で、その体験が無ければスタートラインにも立てないと言っても過言ではない気がします。

そして、こういうものを使って録れる音があるから音を録ろう、作品をつくろうという気になるとも言えます。

 

6. 番外編 最高の楽器も生涯の財産

それから、高過ぎて文化庁の支援事業の枠ではないですが、フルートのC管の6キーのボディを7月くらいに手に入れました。

自分のフルートをつくってくれた職人Michael Grinterさんは2年前に悲惨な交通事故で突如若くして亡くなってしまい、そのうちにオーダーしようと思っていたキー付きのC管が手に入らなくなり、普通のトラッドでは使わない長さのため、出回っている量が極端に少なく、途方に暮れていたのですが、北アイルランドのプロ奏者の方がボディだけ売りたいという話を生徒さんが見つけて紹介してくれた縁で漸く手に入りました。

職人さんが亡くなって価格が高騰していたので、頂いたばかりの持続化給付金の半分が入った側から消えていくという程の出費となりましたが、その後歌もののライヴ、能楽×オペラのコラボ公演、レコーディングととんでもない頻度で使われ、これが無かったらどうなっていたのだろうとゾッとするくらい活躍しています。

やはり良い楽器もその後の人生をずっと変えてくれる程のインパクトを持っています。

しかもそれが衰えていくことがありません。

何なら成長さえしていきます。

こういうものってそう多くはないですね、やはり。

Apple製品はそれに近いものがありますが、やはり寿命と買い替えサイクルはありますね。

(あ、もし自分が今まで使っていたGrinterのC管のキーレスのボディ部分が欲しいという方がいらっしゃったらお譲りできますのでご相談下さい。)

 

7. ミニマルライフの魅力の再確認

勿論、今回の支援で購入したものは上記以外のものも大いに役に立っていますし、有効に活用しています。

しかし、次から次へものを買うという体験には中毒性がありながら、幸福感にはなかなかつながらない。

改めてそう思わせてくれる良い体験でした。

ミニマルなライフスタイルというのはかなり幅があって、人によって志向が大分違ったりします。

自分はものにはこだわりが強い方で、使っている喜びを継続的に味わえる少数のものにだけ取り囲まれて暮らしたい。

そうするにはトライ&エラーも必要になってきます。

ネットで徹底的に情報収集しトライ、もし自分に合わなければメルカリで販売するというサイクルはとても有り難く、ミニマルなライフスタイルを構築していく上では必要不可欠です。

昨年末に土星と木星が近づくグレートコンジャンクションというターニングポイントを経て、産業革命以来200年以上続いてきた、物が価値を持つ土の時代が終わり、コミュニティが価値を持つ風の時代に移ったそうです。

ものを手放しやすくなったり、手放すことが価値を持ったりというここ最近の流れは、まさしくその表れなのかなと、そう思いながら今日も少しずつものを減らそうと試みています。

 

 

8. おまけの追記 Clubhouse

最近流行りのClubhouseが面白くて色んな部屋に出入りして色んな人と話をしています。

ミニマリスト達が集まる部屋、音楽家が集まる部屋、色々あって面白く、アイリッシュ音楽の人達もちらほら増えてきていて、Clubhouseで何ができるか情報交換をする会を先日初めて開き、これから試験的に少しずつそちらでも発信していこうと思っています。

そんな中でミニマルライフと音楽家って相性悪いんじゃないかということにふと思い当たってしまいました。

楽器、機材、CD、楽譜。

今回取り上げた話もそうですが、基本的にどうしても減らせないものが多過ぎるなと。

そんな悩みを抱えた人同士が集まって、一体どうやって対処しているのか、どう悩んでいるのか、話をしたいなと思っています。

ご興味おありの方はぜひ声をかけて下さい。

Clubhouse自体のご招待も出せますので。