ゴールウェイのセッション その1

ゴールウェイのセッションは明るい。

なんだか漠然とした言い方ですが、漠然とそんな感じなのです。

別に国中のセッション比べてとかでは全然ないし、ゴールウェイ中のセッションに行った訳でもないのですが、少なくともたまたま行ったセッションはみんなそうでした。

エニスはもうちょっと落ち着いた感じだし、ダブリンはもっと大人しくて暗い。

どこもあくまでたまたま行ったところの比較なので概論だとは思わないで下さい。

ただ、年齢層が若干若めで勢いがあるというのは言えるかもしれません。

学園都市で街中を歩いていても若者があふれ、活気があるという街の雰囲気を、もしかしたらセッションはそのまま反映しているのかもしれません。

知人にいいセッションがあると紹介されたパブは二軒。

一つは街の中心部にあるチコリというパブ。

毎日18時から21時までセッションをやっていて、ホストは曜日によって日替わり。

滞在していた数日間はオリヴァーというボタンアコーディオン弾きとフェイビアンというギター弾きがホスト。

がっちりと安定したアコーディオンはお客であふれかえる騒がしいパブでもしっかり聞こえ、逆にギターは繊細な、テンションコードを多用するスタイルで、客にというよりはアコーディオン一人に聞かせているような感じ。

もう二人だけで完結してしまうようなクオリティの高さ、これがゴールウェイやエニスなんかで見られる、音楽に自信を持つパブがミュージシャンを雇って用意する典型的なセッションと誰かが言ってましたっけ。

しばらく心地良く眺めていたのですが、入れと誘われたので恐る恐る参加。

こういうセッションに入る瞬間はかなり緊張しますね。

ですが、こちらがある程度弾けるとわかると一気に打ち解けてくれる、これが何とも不思議なところ。

大体どこのパブで弾いてても日本人が普通にセッションで弾いているととても目立つものですから、周りのお客さんはびっくりして、まあとにかくたくさん話しかけて下さる訳です。

「君の演奏はすばらしい。どこで習ったの?この国に住んでるの?え?日本で覚えた?信じられない。すばらしい。」

どこで弾いていてもこんな調子なのですが、これって「日本人だから」っていう部分がついて回る訳で掛け値無しでの評価とはちょっと違う訳です。

中にはパブの常連さんで「何十年も聴き続けてるけど、そこらのアイルランド人よりずっと良い」なんて言って下さる方もいらっしゃいますが、それだってやっぱりフラットな見方とは違う訳です。

そして何より、あんまり騒がれると他のミュージシャンに対してはちょっと申し訳ない気持ちになるのです。

一方、ミュージシャンに認めてもらうというのはちょっと意味が違ってきます。

見知らぬ日本人が入っていくと、彼らは逆に警戒を強めます。

良いセッションが行われている時程、それを壊されることを何よりも嫌うからです。

ここが面白いところで、レベルの高いプレイヤー程この傾向が強くなるのですが、逆にこちらが弾けてコミュニケーションが取れる相手だとわかると、上手い人程、こちらが日本人であるということをほとんど無視して受け入れてくれるのです。

アイルランドの音楽をやっていて良かったと思える瞬間の一つです。


ういう訳でオリヴァーもフェイビアンもこちらの顔を見ると入れよと合図してくれるようになったのですが、このフェイビアン、実はフルネームがフェイビア
ン・ジョイスで、日本に何度か来ているグラーダという若手バンドのヴォーカル、ニコラ・ジョイスのお兄さんなんだそうです。

世の中の狭いですね。

長くなってしまったので、もう一軒はまた別の話に。