アコーディオン

更新なかなかできなくてすみません。

まずは先週火曜日、調布のアイリッシュ・パブ ケニーズでのライヴに来て下さった皆様、ありがとうございました。

ケニーズでのJizoのライヴも3回目でしたが、段々回数を重ねる毎に、お互いの読みが深くなり、ぶれが無くなって、しっかりかみ合うようになって参りました。

 

現在はライヴ中のMCでも軽く触れましたが、ボタン・アコーディオンの三浦陽一さんにゲストで参加して頂く企てを進めております。

フルートとフィドルという組み合わせはとても相性がいいのですが、低音域についてはややパワーに欠けるところがあります。

アコーディオンという楽器はその低音域が圧倒的に強く、またダイナミックレンジがはるかに大きな楽器で、この楽器が入ると、例えば今までは音域が低くて敬遠していたような曲も選択しに入ってきまし、奏法的にも随分幅が広がります。

 

自分は元々このアコーディオンという楽器が、音が大き過ぎたりリズムが鈍かったりして、あまり好きではなかったのですが、一昨年アイルランドに行った際、アコーディオンの神様マーティン・オコナーMartin O'Connorのライヴを聴いてそのイメージが覆りました。

彼の演奏を何とか言葉で表現すると、、、まず、基本的にずっと大きな音を出すということをしません。

基本の音量レベルがずっと小さく抑えられていて、音が柔らかく美しく、ここぞというところだけをアクセントとして一瞬大きくする、そのために非常にキレのあるビートが生まれる、そんな演奏です。

この柔らかく美しく小さな音のコントロールというのがどれだけ速いパッセージを弾いても失われることがありません。

それはもう違う楽器を弾いているんじゃないかと思わされるほどです。

地元の名の知れたフルート吹きが、「マーティンはアコーディオンとコンサティーナ(もっと音が小さくて柔らかい蛇腹系の楽器)を掛け合わせた別の楽器を使っているに違いない。でなけりゃあんな柔らかい音は出ない」と言っていた位です。実際の所、普通のアコーディオン一つしか使っていなかったのですが。

また、普通のアコーディオンプレイヤーがよく使う左手のベース的な伴奏もあまり使いません。

これにはアイリッシュ系のボタンアコーディオンのボタンの配列が絡んでいるそうで、二種類あるその配列によってつけやすかったり、逆にほとんど不可能だったりするそうです。

この左手の伴奏というのが結構主張が強くて、音が大きく、他の伴奏とぶつかることも多いので、個人的にはあまり好きではないのですが、マーティン・オコナーのプレイは、左手をあまり多用せず、右手の旋律だけできっちり音楽を立たせてしまう魅力を持っています。

彼のライヴを自分はコロフィンという村のフェスティバルで聴いたのですが、聴衆の多くが非常にレベルの高いアマチュアのミュージシャンであったにも関わらず、ライヴが始まると会場は明らかに普通のライヴとは異なる低い声のどよめきであふれかえりました。

そして、一曲終わる毎に各々が小声でぼそっと「ジーザス…」とか「スケアスリー」とつぶやくのです。

まるで、自分達が普段やっている音楽とは明らかに異質で、レベルがかけ離れていて、理解できないというような感じでした。

あるいは、むしろ普段あれだけ音楽をやっている彼らだからこそ、その質の違いに敏感に気付いたのかもしれません。

実際、彼らの音楽(そのライヴでは、共演者としてフィドルのカハル・ヘイデン、ギターのシェイマス・オダウドがいました)は、アイリッシュという枠には全く収まっておらず、クラシック的なフレージング観や構成力等、他ジャンルを丸飲みにし、決して表には出しませんが、聴衆を惹きつけるために、選曲から曲の並べ方、つなぎ方、変奏、アレンジに至るまで、至る所に緻密な計算がなされているということが感じられる音楽でした。

このライヴの経験が今の自分のスタンスにつながっていることは言うまでもありません。

機会があればマーティン・オコナーの音楽をぜひ一度聴いてみて下さい。

 

さて、話は戻りますが、このマーティン・オコナーのようなスタイルのアコーディオンプレイヤーは他にも何人かいるのですが、 これがスタイルとして確立しているということに自分は後から気付きました。

そして、自分の知る限り、首都圏で活動している方で、このスタイルをはっきり志している唯一のプレイヤーが三浦さんだったのです。

一年以上前、セッションで三浦さんの音を初めて聴いた時、荒削りだけれど何か他の人とは違った光るものがある、いつか一緒にやってみたいなと漠然と思っていたのですが、その理由の一つは、このようなプレイスタイルの部分に根っこがあったのでした。

 

さて、まだお披露目もする前に早々と三浦さんの宣伝をしてしまいました。

まだまだ一緒に演奏できるレパートリーも少なく、お互い忙しくて練習時間も取れないため、かみ合っていくようになるには時間がかかるとは思いますが、これから面白くなっていくと思います。

ご期待下さい。