遅くなりましたが、リバー・ダンス無事終わりました。
来て下さった皆様、共演者の皆様、ありがとうございました。
PA
に多少問題があったようで、笛の音量、音圧が全然足りないとのご指摘を方々から受けたりも致しましたが、その中でギターと二人だけで演奏した「Down
by the Sally
Gardens」は比較的バランスが良かったようで、アイリッシュを初めて聴いたお客様からも結構大きな反響があったようです。
リ
バー・ダンスについても、直前までしっかりさらう時間がなかなか取れなかったため、ぎりぎりのリハまで自分が音をつくるのに必死な部分がありましたが、最
後の最後で周りを見ながら演奏する余裕が生まれ、70人クラスの吹奏楽団を後ろに背負いながらという希有な体験を楽しませて頂きました。
自分は常日頃から自分の殻に閉じこもった演奏だけはするまいと考えておりまして、できるだけ多くのお客さんや共演者とコミュニケーションを取り、より大きなスケールの演奏を 志していますが、今回は特にそのことを強く感じました。
お客さんや共演者に力を頂いた部分は、かなりあったと思います。
聴きに来て下さった地元のお客さんが温かかったのは勿論ですが、とりわけ共演者の方々が好意的で、最後リバー・ダンスを演奏しながら、これがまだまだ終わらずに続いてくれたらなとしばしば思いました。
今回の貴重な機会を頂けたことを、不思議な縁でつながった方々に感謝致します。
さて、ここからはちょっと離れてメンタル・コントロールの話。
今回のように演奏時間が15~20分程度と短時間の場合、普段のアイリッシュ・パブのライヴとは、メンタル・コントロールが大きく異なります。
パブのライヴの場合、時間は大抵は45分×2~3ステージ。
1ステージに大体8セット演奏します。
自分の場合、その中につなぎのセット的な密度の薄いセットを入れるということはありませんし、 ライヴの最初も、お客さんを引き込むためにかなりギアを上げて入るのですが、それでも1ステージを通せば、その中で緩急があり、意図的にゆるめるような部分も出てきます。
そのような中で、最初(特に1stステージの最初)にある程度テンションを上げた後は、最後(特に最終ステージの最後)にテンションのピークが来るような選曲とメンタル・コントロール、エネルギー配分を意識的につくるわけです。
一方、今回のような短時間の演奏の場合、いきなりトップギアで入ることが、その演奏の成功の必須条件になります。
演奏している内に調子が上がってくる等と考えていたら、ギアが上がりきる前に演奏が終わってしまうからです。
最初のテンションと最後のピークのテンションがそのままつながっているという風にも言えるかもしれません。
そして、自分の場合、この最初からトップギアに上げるという作業は、かなり意図的につくっていかないとまずうまくいきません。
メンタルの強さはある程度先天的なものと考えている人が特に音楽の場合多いようですが、スポーツ科学の分野では、メンタル・コントロールは後天的に習得して自らつくりあげるものというのが常識になっています。
不思議なことにスポーツでのメンタル・コントロールの理論は音楽にもそのまま当てはまることが多いようです。
さて、自分がこうしていきなりトップギアに上げるために何をしているか。
この辺りは自分の舞台裏をご覧になったことがある方はご存知かもしれませんが、結構人が変わります(笑)
段々口数が減り、自分の中に入っていきます。
ストレッチなどをして体をほぐしながら、一呼吸を長くゆっくりにして、視線を一カ所に集中させます。
この視線のコントロールは、プロのテニスプレイヤーがよくポイント間でラケットのストリングスをじっと見ながら直しているのと同じで、集中力を高める効果があるようです。
また、本番前にできるだけ緊張するようにします(笑)
本番前に緊張しているとステージに乗った時には自由になれるのですが、緊張していないとステージに乗ってから緊張し出すので、緊張が足りない場合は自ら緊張を煽るのです。
そして、ステージ袖から一歩ステージに踏み出した瞬間に会場の空気が変わるように自らを演出しながら入っていくわけです。
他にも細かいことが色々あるのですが、このようなことをやっている時とやっていない時とでは、自分の演奏は勿論、それを見るお客さんの反応も信じがたいほど変わってきます。
あるいはこうした“儀式”のようなものを一つ一つこなしていくこと自体に、メンタルを安定させる要素があるとも言えるかもしれません。
自分の演奏に限らず、今度このようなタイプの演奏をお聴きになる時は、 こういったことに着目して演奏者を見比べてみて下さい。
また別の楽しみ方が味わえると思います。