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【シンプルなスタイルの演奏】
先々週出したレッスン動画の中でシンプルなスタイルの演奏が好きだという話をしました。
毎日食べても飽きない、お米のような演奏。
すっきりしていて、何をやっているのかよくわかるので、誰でもパッと真似できそうなのに、やってみると全然違うものになってしまうような、精度が高過ぎて、キレが良過ぎて、全く真似できない演奏。
そういう演奏が好きで目指していますが、そういうことを考えていると、建築物とかインテリアとかも似ているなぁと思うことがよくあります。
個人的に家とか家の中とかとても好きで、近所を散歩していても家ってついついじろじろ見てしまうのですが(笑)、そもそも音楽と建築は近いという感覚があります。
音楽って自由な表現、特に感情表現というような部分がピックアップされやすいですが、実際かなりしっかり決まり事はあって、良い演奏程確実にその決まり事はおさえてますからね。
案外自由度は低くて、計算して建築物を立てるように音を組み上げていってその構造美を楽しむという要素が相当強いと思っています。
とりわけ自分がやっているアイリッシュ音楽なんか「自分」が入りづらいジャンルかなと思いますし。
【インテリア 引き算】
そういうこともあって特に最近インテリアとか家の話をしてるYouTubeの動画をよく見るんですね。
前はYouTubeがお勧めしてくる動画ってアイリッシュ系の演奏の動画とテニスの動画ばっかりだったんですけれど、この自宅引きこもり状況になって動画配信やらポッドキャストやらに明け暮れるようになると、動画の編集アプリの紹介、その使い方、写真の加工、録音機材、ガジェット系からblog作成用のエディタといったマニアックな動画がガンガン増えてきて、そこにインテリア・家系動画(ラーメンではありません)やら海外のミニマルハウス・タイニーハウスの紹介動画が混ざってきて、もうカオスになっています(笑)
中でも、げげさんとか、崇島亮さんとか、インテリアや家について面白い発信をしている方々の発言を見ていると、「お洒落にするルールは〇〇と△△、だけど、最終的に大事なのは引き算!」というのがよく出てきます。
結局は足し算ではなく、引き算。
やっぱり引き算なんだよなぁと納得しながら眺めています。
【シンプルと殺風景の境界】
その一方で、自分より遥かにミニマルな生活を送っている生徒さんの女の子が以前「物を減らしまくっていったら、ある時自分の家の殺風景さに悲しくなってしまった」という話をしてまして。
それもわかるんですよね。
シンプルで美しいってことと殺風景って紙一重位近いよなと。
そこは前から気になっていて、一体何がそれを分けるんだろうってずっと考えています。
ネットで調べてみると、こんなキーワードが出てきました。
- 温かみ
木の温もりがあると殺風景でなくなる。
- ディテール
何かディテールを持つインテリアを少なめにアクセントとして置くと殺風景でなくなる。
- こだわりの一点
すごくクオリティの高い物が少しだけ置いてあると殺風景でなくなる。
参考URL
https://suvaco.jp/doc/simple-and-minimal-interior-190312
https://freeandlight.net/2017/08/29/2017-08-29-191228/
なるほど、わかる気がしますね。
【ミニマリストにも色んなタイプがある】
今や人口に膾炙したミニマリストも、実は色んなタイプがあって、結構ベクトルが分かれるんですよね。
どこかで見た面白い分類には「お洒落系」「仙人系」「貧困系」とかあって結構笑えましたが、
3分類「機能系」「美観系」「節約系」
この辺りがすっきりわかりやすいですかね。
そこに移住⇄定住のベクトルが入ってくると、
6分類
こうなるイメージですかね。
仙人系とか節約系、機能系を突き詰めた辺りに殺風景な部屋が広がってそうですね。
美観系はお洒落な空間にしたい、こだわりのものに囲まれて生活したいという方向で、そうすると殺風景を免れるのでしょうか。
シンプルであるって結構色々あって難しいなとあれこれ考えていたら、面白い本を見つけました。
【ケン・シーガル『Think Simple – アップルを生みだす熱狂的哲学』】
著者ケン・シーガルは、Apple、Dell、intel、IBMなどと仕事をしてきた人で、Appleのキャッチコピー「Think Different」や「iMac」の名付け親でもある伝説的なクリエイティブ・ディレクター。
- シンプルであることそのものに価値がある。
- Appleはシンプルであることに宗教的なレベルの価値を置いている。
- シンプルさを達成するには多大な努力が必要である。
- 多くの企業がAppleの表面だけ真似ようとし、大抵の場合途中で複雑さに負けてしまい、価値を失ってしまう。
というようなことが書かれています。
主にスティーブ・ジョブズが生きていた時代のエピソードが満載で、特にAppleの会議が本当に必要な人、数人だけで会議をやっていたという話がとても印象的でした。
確かに対面の会議でもLineのグループでも人数が多くなると途端に遠慮して発言しないという空気が出てきて議論が進まなくなり、物事が複雑になっていくんですよね。
そして、何より「シンプルさそのものに価値がある」というのは自分にとってはちょっと盲点でした。
【Appleの例】
話を戻すと「ただ単に物を減らしていくこと」と「突き詰めて考えてシンプルで美しい空間をつくり出すこと」は同じではない、こういうことになるでしょうか。
確かにAppleの製品を買うと真っ白な箱に入っていて説明書も無く、シンプルそのものですが、その真っ白の箱自体の色や質感が非常に良くて、また箱を開けて取り出すことがすごく考えられていて、箱を手にした瞬間から製品を使う瞬間までワクワクが続きます。
間違いなく殺風景でないシンプルさですが、それをつくるのにどれだけの検討項目があるのか、途方に暮れる気がします。
【音楽でも日々の暮らしでも】
自分が求めている音楽は、日々の暮らしは、そういうクオリティのものなんだろうなと思います。
そのためにゆっくり指を動かして練習し、ゆっくり呼吸をして身体との調和を求め、音を一つ一つ整えていく。
あるいは日々掃除をして、余計なものを減らし、大事なものだけを置いて暮らしを整えていく。
そんなことを考える今日この頃です。
普段は音楽の話とミニマルライフの話を分けて書いていますが、今回は気が付けばどっちの話を書いているのかわからなくなりましたし、内容も最初の設計から大幅に脱線して徒然なるままに書いてしましました。
ちっともシンプルな文章ではなくなってしまいましたが、シンプルさを得るための多大な努力、試行錯誤をそのまま書き散らしてみました。
本当は書評だけをちょこっとシンプルに書く予定だったんですけどねw